香りと歴史、フェンネルの魅力: 料理、ハーブ、文化を巡る旅

香り高く、歴史に彩られた庭で、フェンネルの魔法が繰り広げられています。

料理の舞台裏に立ち、ハーブの奥深さを感じながら、古代の足跡を追う旅に出かけましょう。

セリ科に属し、フェンネルとして親しまれるこの多年生の草本植物は、甘み溢れる香りと樟脳のような風味で、食卓や庭に欠かせない存在となっています。

香辛料としての輝き、歴史の舞台裏での華やかな躍動を垣間見ることで、フェンネルの不思議な世界に迫ります。

【要約】

  • フェンネルの種子が香りと味の豊かな料理に深みを加えます。
  • 香辛料としての利用法だけでなく、石鹸や香水など異なる形での幅広い利用
  • 中国から日本へ伝わり、『和名抄』に登場するなど、異なる文化での利用法も興味深いものがあります。

ウイキョウ(フェンネル)とは?

ウイキョウ(フェンネル)

ウイキョウ(Foeniculum vulgare)は、セリ科に属し、馴染み深い名前であるフェンネルとも呼ばれる多年生の草本植物です。

この唯一のウイキョウ属の種は、甘みのある香りと樟脳のような風味で知られ、古くから香辛料や薬草として重宝され、栽培が行われています。

また、フェンネル・シーズ(フェンネルシード)としても利用され、葉はビネガーに漬けたり、煮込みや魚の香草焼きに、種子はパン生地に使用されます。

さらに、肥大した株元はサラダやスープにも加えられます。

中国では「茴香(ういきょう)」と呼ばれ、その名前の由来は、腐った魚に使うと香りが回復するためだと言われています。

和名のウイキョウ(茴香)は、唐音で「ウイ」、「香」を漢音で「キョウ」と読んで名付けられたとされています。

別名として、大きな茴香を指す場合には「ダイウイキョウ」、小さな茴香を指す場合には「ショウウイキョウ」とも呼ばれています。

英語では「Fennel」としても知られ、フランス名では「fenouil」、イタリア名では「Finocchio」とも呼ばれています。

属名の「Foeniculum」は、ラテン語で「小さな干し草」を意味し、中世ヨーロッパでは「fanculum」と呼ばれ、後に「Fenkel」や「Finule」の名前で広がっていきました。

また、種小名の「vulgare」は、ラテン語で「普通の」という意味です。

古代ギリシャでは「マラトン」(mararthon)と呼ばれ、その名は「細くなる」を意味する「maraion」に由来しています。

フェンネルの歴史

フェンネルは、人類史の中で非常に古い時代から栽培されているハーブの一つです。

地中海沿岸の原産地では、古代ギリシャ人がフェンネルを利用し、その空腹を抑えるために食べていました。

古代ローマ人もこれを野菜として取り入れ、ローマ軍の遠征によってヨーロッパ全体に広まりました。

フェンネルには胃腸の働きを整え、視力を向上させる力があるとされ、古代ローマの戦士たちにも愛用されていました。

その種子と芽については、961年のスペインの農耕記録にも残っており、1066年以前のアングロサクソンの料理法と薬用法にも言及があります。

中世ヨーロッパでは、フェンネルが夏至祭の前夜に、災いや魔物から家を守るために他のハーブと一緒に戸口に吊るされたり、虫を追い払うためにも利用されました。

ピューリタンは「礼拝の種」と呼び、礼拝の合間にフェンネルの種子を噛んでいました。

同様に、カトリック教徒も断食日の間の空腹を紛らわすためにこれを食べました。

17世紀には植物学者のウィリアム・コールズが、フェンネルで作ったジュースやスープを肥満患者に与えてやせさせると言及しています。

19世紀のアメリカの詩人ロングフェローも、低い草木の上に黄色い花を咲かせるフェンネルを称賛しています。

中国には西方(ヨーロッパ・地中海沿岸)から伝わり、その後日本にも渡来したと考えられています。

日本では、『和名類聚抄(和名抄)』(10世紀)に登場する「クレノオモ」がウイキョウの古名とされ、江戸時代には食用としては不明ながら、薬用として幅広く栽培されていました。

フローレンスフェンネル(イタリーウイキョウ)の変種が日本に導入されたのは明治中期ごろと考えられています。

フェンネルの利用方法

香辛料として主に利用されるのは、この植物の種子です。

ヨーロッパでは生の茎葉も料理に使われます。

野菜としては、葉や肥大した茎が食べられます。

若い葉や果実は甘く香り高く、消化促進や消臭の効果があり、古くから香辛料や香料として広く用いられています。

収量は約4〜7%で、ベルモットなどのお酒にも使われます。

種子は乾燥した状態でアニスやスターアニスに似た香りがあり、ディルシードよりも甘く繊細な香りがします。

主成分はアネトールで、精油の50〜60%を占めます。

この香りは石鹸などにも利用されます。

食用の部位は広範で、茎葉は特に5〜10月に旬を迎え、市場価値の高いものはやわらかく緑色で斑点のないものです。

フェンネルシードは香辛料としてスープ、シチュー、肉料理などに使われ、魚料理との相性が良く、「魚のハーブ」とも呼ばれます。

イタリア料理では代表的な食材であり、西洋では茎葉が魚料理でよく利用されます。

また、ピクルスやカレー、五香粉、アブサンなどの製品にも使われ、幅広い料理に香りを添えます。

葉や茎はディルに似ており、サラダやピクルス、魚料理に利用されます。

特に魚料理では刻んでソースに入れたり、生のまま使われたりします。

茎や花はサラダや煮込み料理に利用され、鱗茎は「フィノッキオ」と呼ばれ、サラダや煮物、炒め物、スープに幅広く使われます。

イタリア料理では茎がスープやサラダに加えられ、沖縄料理では整腸作用のある食材として使われています。

どんな人におすすめ?

フェンネルは以下のような人におすすめです。

1:料理愛好者向け

・フェンネルの香りや味を楽しんで料理に取り入れたい人。

・イタリア料理や魚料理が好きな人。

2:ハーブ栽培者向け

・フェンネルを自分で育てて利用したい庭いじり好きな人。

・香辛料やハーブの多様な用途に興味がある人。

3:歴史と文化に興味がある人向け

・古代ギリシャやローマの歴史に興味がある人。

・フェンネルの植物学的な起源や利用法に興味がある人。

4:健康志向の人向け

・薬草や健康食品に興味がある人。

・消化促進や視力向上の伝統的な利用に興味がある人。


【まとめ】

  • フェンネルの種子が香りと味の豊かな料理に深みを加えます。
  • 香辛料としての利用法だけでなく、石鹸や香水など異なる形での幅広い利用
  • 中国から日本へ伝わり、『和名抄』に登場するなど、異なる文化での利用法も興味深いものがあります。

フェンネルの香り高さと歴史的な足跡、庭での育て方や料理への利用法、そして健康に対する恩恵。

これらが結びつき、フェンネルはまさに多面的な魅力を持つハーブであることが分かりました。

料理愛好者やハーブ栽培者にとって新たな発見となり、歴史や文化への興味を刺激します。

フェンネルは古代から現代まで人々を魅了し、その存在感は広がり続けています。

香り、味、歴史、文化、健康。

これらの要素が一体となり、フェンネルは食と自然との調和を象徴します。

庭先での栽培から料理のアクセントまで、フェンネルの魔法を感じながら、新たな食の旅に出かけましょう。

最後まで記事を見て頂きありがとうございます。

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