よく、『世界一辛い唐辛子を使った料理』や『ギネスに登録された激辛唐辛子』と言ったことを聞いたことはあるかもしれませんが、
皆さんは、地球上で1番辛い物質をご存じでしょうか?
今回は、食べる事はおろか触ることも危険すぎるカプサイシン物質をご紹介します。
・地球上で最もカプサイシンを含んだ物質
・食べる事はおろか、触れるのも危険
・関節痛や局所的な痛みを和らげる効果がある
レシニフェラトキシン(RTX)とは?
天然に存在する超強力なカプサイシンアナログ(化合物)であり、スコヴィル値は160億スコヴィルと非常に高く、純粋なカプサイシンの約1,000倍に達し、ハバネロの3万2千〜16万倍にも達します。
2023年現在、加工品ではない単体の唐辛子で最も辛いとされているペッパーXのスコヴィル値でも318万、加工品で最も辛く食品扱いするべきでないとさえされているブレアの午前6時でもカプサイシン結晶と同等の1600万スコヴィルで『レシニフェラトキシン』の1/1000であるから、このスコヴィル値がいかに常軌を逸した数値であるかどうかわかります。
モロッコ原産のトウダイグサ科植物であるハッカクキリン (Euphorbia resinifera) に高濃度に含まれます。
触っただけでも炎症を起こす
レシニフェラトキシンは毒性があり、簡単に化学性の火傷を起こします。
辛さを確かめる程度の摂取でも非常に危険で、ネズミに対する動物実験では体重1kgに対し、148mg程度の摂取で致死あるいは健康に対して重大な被害を起こすことが分かっています。
園芸品としても使われる機会が多く、ハッカクキリンに成分が含まれていることから、この植物を扱う際には注意が必要です。
特に『ハッカクキリン』を切り取る場合、切り口が生じた部分から汁が染み出るので絶対にこれに触れないよう注意しなければなりません。
どんなものに利用される?
こんなに危険な辛味成分ですが、役に立つこともあります。
高濃度の『レシニフェラトキシン』を含む、ハッカクキリンの乳液から新たな鎮痛剤をデザインするための研究がアメリカ国立衛生研究所やペンシルベニア大学で行われた結果があります。
『レシニフェラトキシン』は神経の物質に結合すると、神経細胞をこじ開け、大量のカルシウムを流入させることで、痛覚神経末端が不活性化(痛みの神経が感じなくなる)する。
一方でほかの感覚神経細胞には影響はありません。
このためオピオイド(ケシから作られる化合物)に見られる便秘や鎮静、呼吸障害といった副作用がなく、依存性もないと言われています。
このため、関節痛などの局所的な痛みの治療や、終末期医療への応用が研究されています。
終末期医療とは、一般的に老衰・病気・障害の進行により死に至ることを回避するいかなる方法もなく、予想される余命が3~6ヶ月以内程度の意味で表現されています。
レシニフェラトキシンは、辛味成分『カプサイシン』を含んだあらゆる物質の頂点に立つ成分です。
もちろん食べる事は、愚か触れることも危険ですから、もし『レシニフェラトキシン』を含んだハッカクキリンに遭遇したら、気をつけましょう。