唐辛子の世界には、燃えるような辛さが広がっています。
その辛さを測る尺度、スコヴィル値。
これは唐辛子の辛さを数値化するためのユニークなスケールで、辛さ好きな人たちにとっては馴染みの深い言葉でしょう。
スコヴィル値の背後には、唐辛子の奥深い世界とその辛さの源、カプサイシンが待ち構えています。
本記事では、スコヴィル値の起源から、唐辛子の種類や辛さの測定方法、面白い事実までを探ります。
一緒に、唐辛子の辛さの興奮と驚きに触れていきましょう。
【要約】
- スコヴィル値は唐辛子の辛さを数値で表現する辛さの尺度。
- 高速液体クロマトグラフィーで客観的に測定され、主観に左右されない。
- ビールや歯磨き粉など、食品以外にも様々な製品の辛さを示す基準。
スコヴィル値とは?
スコヴィル値、またはスコヴィルスケールは、唐辛子の辛さを測定する際の単位です。
トウガラシ属の植物の果実にはカプサイシンが含まれており、この成分が辛味受容体の神経末端を刺激します。
この辛さはスコヴィル辛味単位(Scoville heat units、SHU)で表され、カプサイシンの割合を示しています。
一部の市販のホットソースは、 stスコヴィル値を誇示して商品を宣伝しています。
この尺度は1912年にアメリカの化学者ウィルバー・スコヴィルによって考案され、スコヴィル味覚テスト(Scoville Organoleptic Test)と名付けられました。
唐辛子の辛さの測定方法
最初は、複数の被験者がトウガラシのエキスを砂糖水に溶かし、辛味を感じなくなるまでの倍率をスコヴィル値としていました。
この方法では、ピーマンのスコヴィル値は0で、ハバネロは30万でした。
しかし、被験者の主観に依存する問題があり、舌の慣れを考慮して処置が必要で、1人あたりの作業量は8時間に6サンプルに限られていました。
最近では、電気を使用してカプサイシンの量を測定する高速液体クロマトグラフィーによるジレット法などが開発され、主流となっています。
しかし、スコヴィル値が広く普及しているため、機械測定されたカプサイシン量をスコヴィル値に変換して表示する方法が一般的です。
測定出来ないもの
同じ辛さであっても、カプサイシン以外の物質による辛さは異なる機序で感じられるため、それをスコヴィル値で単純に表現することはできません。
スコヴィル値は、例えば黒コショウのピペリンやショウガのジンゲロールなど、他の辛みを持つ化合物の測定にも適用できます。
これらの物質はカプサイシンとは異なる受容体や神経伝達物質に作用し、辛さを引き起こします。
そのため、同じスコヴィル値でも、カプサイシン由来の辛さとピペリンやジンゲロール由来の辛さは感じ方が異なります。
スコヴィル値が広く用いられる一方で、それだけでは全ての辛さを正確に表現するのは難しい側面もあります。
各物質が異なる生化学的経路で辛さを生み出すため、食材や調味料の辛さを評価する際には、複数の指標や感覚を考慮することが重要です。
代表的な唐辛子の辛さ(スコヴィル値)
様々な品種改良により、唐辛子の世界では激辛なものが次々と誕生しています。
以下は代表的な唐辛子の種類とスコヴィル値、それぞれの特徴です。
1:ハラペーニョ(2,500~8,000 SHU)
メキシコを代表する唐辛子で、辛さとほのかな甘みが調和しています。
主にメキシコ料理に使用され、サラダやピクルスにも適しています。
2:タバスコペッパー(3万~5万 SHU)(一般的なタバスコは2,500スコヴィル)
タバスコソースの原料として知られ、小ぶりで辛さがあります。
さまざまな唐辛子の起源となっています。
3:鷹の爪(4万~5万 SHU)
日本のペペロンチーノに使われる唐辛子で、その名の通り実が上向きに伸びる形状が特徴です。
一味唐辛子としても知られています。
4:島唐辛子(5万~10万 SHU)
沖縄や奄美地方で栽培され、小ぶりで辛い唐辛子。泡盛に漬け込んだ「コーレーグース」が名産品です。
5:プリッキーヌ(5万~10万 SHU)
タイ原産の唐辛子で、トムヤムクンやグリーンカレーによく使用されます。
東南アジアでも広く食べられています。
6:ハバネロ(25万~45万 SHU)
メキシコ原産で、強烈な辛さとフルーティな香りが特徴。激辛ブームのきっかけとなりました。
7:ハバネロ・レッドサビナ(25万~58万 SHU)
ハバネロを改良した品種で、丸みのある形状と強烈な辛さが特徴。
取り扱いには注意が必要です。
8:ブート・ジョロキア(100万 SHU)
インド原産の世界一辛い唐辛子。別名「インドの悪魔」や「ゴースト・ペッパー」と呼ばれ、調理時には注意が必要です。
9:キャロライナ・リーパー(164万 SHU)
アメリカで生まれた世界一辛い唐辛子。
大きな鎌のような尾が特徴で、取り扱いには慎重さが求められます。
10:ドラゴンズ・ブレス(248万 SHU)
イギリスで開発された医療用途を考えた唐辛子。
神経を麻痺させるための成分を含み、通常の麻酔が効かない場合に使用されます。
11:ペッパーX(318万 SHU)
キャロライナ・リーパーの育成者によって生み出された激辛唐辛子。
ギネス認定が申請中で、生での摂取は極めて危険です。
カプサイシンとは?
スコヴィル値で計測されるカプサイシンですが、この辛み成分は一体どんなものなのか少し掘り下げて解説していきます。
カプサイシンは、唐辛子のピリッとした辛味の元凶で、その辛さを測るのに使われるスコヴィル値の基準です。
この化合物は、バニリン由来のバニリル基を含むカプサイシノイドと呼ばれるアルカロイドの一種で、バニロイド類にも属しています。
名前の由来は、唐辛子の学名であるCapsicumからきています。
※ バニリルは、バニラに特有の香りと風味をもたらす成分です。この化合物は、カプサイシンが持つ部分構造に含まれており、それが唐辛子に独特の風味を与えています。
※ アルカロイドは、植物や一部の生物に自然に存在する、窒素を含む有機化合物の一群です。これには、カフェインやモルヒネなどが含まれます。アルカロイドはしばしば生物学的に活性があり、植物が防御や相互作用に使用することがあります。
カプサイシンは、油に溶ける透明な結晶で、アルコールには良く溶けるが、冷水にはあまり溶けません。
食べると、体感温度は上がらないが、激しい灼熱感が生まれます。
これは、メントールが引き起こす冷感と似ています。
同時に、痛覚神経を刺激して局所的な刺激や辛味を感じさせ、吸収されると脳に達して内臓感覚神経を活発にし、発汗や強心作用を促進します。
動物たちの中で、哺乳類や昆虫にはこのカプサイシンの受容体があり、彼らは辛いトウガラシを避ける一方で、鳥類はトウガラシを辛く感じずに食べることができます。
これは、鳥が食べ物を丸ごと飲み込むため、種が潰れない方が種の生存率が高まるからだと考えられています。
毒性の面では、カプサイシンは大量に摂取すると問題が生じることもあります。
例えば、唐辛子の大食いを試みた人がカプサイシンの影響で脳血管が収縮し、倒れたという報告もあります。
スコヴィル値の豆知識
スコヴィル値に関する興味深い豆知識をいくつかお伝えしましょう。
1:独自の挑戦文化
辛さ好きな人たちの中には、高いスコヴィル値を誇る唐辛子を摂るチャレンジが広まっています。
例えば、特に高い辛さを誇る唐辛子を生で食べる「辛さの挑戦」が行われ、これが動画共有サイトなどで注目を集めることがあります。
2:ダブルスコヴィル値
一部の唐辛子は、続けて異なる唐辛子を食べるとより辛さが感じられるとされています。
これを「ダブルスコヴィル値」と呼び、辛さの組み合わせによって新たな味わいが生まれることがあります。
3:歯磨き粉にもスコヴィル値
スコヴィル値は唐辛子だけでなく、歯磨き粉にも適用されることがあります。
一部の歯磨き粉には唐辛子由来の成分が含まれ、その辛さを示すのにスコヴィル値が使われます。
4:ビールにも辛さが
一部のクラフトビールには唐辛子が使われ、そのビールの辛さを示すのにスコヴィル値が利用されることがあります。
これにより、ビール愛好者たちが新しい味わいを楽しむことができます。
5:スコヴィル値の計測器
スコヴィル値を正確に計測するための器具として、高速液体クロマトグラフィーが使われています。
これにより、被験者の主観的な感覚に左右されず、客観的な辛さの評価が可能となっています。
6:スコヴィル値の広がり
スコヴィル値は唐辛子だけでなく、一般的な食品にも広がっています。
例えば、辛いチョコレートや辛いアイスクリームなど、さまざまな食品がスコヴィル値で辛さを表示しています。
これらの要素が組み合わさり、スコヴィル値は単なる辛さの単位だけでなく、食の面白さや挑戦の対象としても広く愛されています。
【まとめ】
- スコヴィル値は唐辛子の辛さを数値で表現する辛さの尺度。
- 高速液体クロマトグラフィーで客観的に測定され、主観に左右されない。
- ビールや歯磨き粉など、食品以外にも様々な製品の辛さを示す基準。
唐辛子の魅力と辛さを数値化するスコヴィル値。
これは食の冒険と挑戦を象徴し、唐辛子の多様性を示す。
主観を超えて客観的に辛さを評価する手法が進化し、食品だけでなく歯磨き粉やビールまで広がり、新しい味わいと挑戦が生まれている。
スコヴィル値は辛さの数値だけでなく、食の面白さや新しい経験の源でもあり、唐辛子愛好者にとっては興奮と驚きが広がるスケールと言える。
最後まで記事を見て頂きありがとうございます。